グルメなイノシシの躍動

春にジャガイモ、夏にトウモロコシ、秋にはサツマイモとモンブラン(栗)を食べて、冬はデザートにみかんで締める。
 
これを見るとどこかのオフィスレディの食事のようですが、実はこれ、季節ごとのイノシシの好物です。
 
現在、僕が野菜作りをしている神奈川県大磯町では、イノシシによる作物の食害が深刻です。
今は電気柵などで作物を守っていますが、何もやらないとあっという間に全部食べられてしまう。現にこれまでに沢山の作物をイノシシ食べられてきました。
イノシシ被害があるとないとでは、農業のやりやすさも雲泥の差があります。
 
大磯町でイノシシの被害が増え始めたのはここ5〜6年のことです。それまでは何も対策せずとも被害はありませんでした。
今では、隣町でのイノシシの駆除数は1桁台なのに対して、大磯町では年間200頭以上とまさに桁外れ。
それだけイノシシが沢山いるというわけです。
 
イノシシが増えた理由はさまざまな因果があると思いますが、ひとつは繁殖力が高いことが挙げられます。
イノシシは豚の仲間ですので1度の出産で6〜7匹の瓜坊を産みます。
つまり倍々ゲームならぬ7倍ゲーム。あっという間に増えていくんです。
 
また衛星管理の問題上、食肉として流通に乗せられないという点も見逃せません。
 
大磯町には現在も現役の猟友会があるのですが、イノシシを獲ってもその肉をスーパーなや小売店などで積極的に販売できません。
野生の獣であるため、食肉として流通に乗せるには然るべき衛生処理が必要です。
しかしそのためには衛生処理施設が必要で、採算なども含めて参入はハードルが高いです。
 
そんなわけで1度増えたイノシシはなかなか減りません。
現在大磯町は駆除業者に依頼して捕獲をしていますが、畑をやっていて電気柵の周りを掘り返された形跡などを見ても、ここ数年減っている印象はありません。

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かつて食べたイノシシ鍋。めちゃくちゃ美味しかった。
そこで僕は、電気柵の無かった江戸時代などはどのように対策をしたのかを少し調べてみました。
 
結果は「捕獲して食らう」というものでした。
 
イノシシは米も食べます。江戸時代は作物そのものが年貢となりますので、また大型の機械もなく栽培面積も少ないので、少しの被害が命取りです。
集落のみんなで徹底的に捕獲して食べる。一見アナログに見えて確実な、めちゃくちゃワイルドな方法ですよね。
 
農業を始めるまで考えもしなかった獣とのバランス。
スーパーで当たり前に売っている野菜も、裏では農家と獣との激しい攻防戦があったりするのです。
 
江戸時代のようにみんなで捕獲しにいくことはできないまでも、みんなで地域の獣とのバランスを考えることは、地産の作物を守ることに繋がるのかもしれません。
 
ちなみに最初に挙げたイノシシの好物は、そのまま僕の奥さんの好物です。
 
グルメな奥さんを持つ僕と、グルメなイノシシとの戦いは続くのです。